塗布技術の説明

ここでは塗布機の構成内容と、塗布機の中で最も重要な塗布方式に ついて概略の説明いたします。今後の塗布機の製作、現有塗布設備の改良などの 参考にしてください。

1、塗布機の概要説明

 塗布機の概要説明
塗布機全体を示します。
塗布機は、送り出し(No1UN-W)部でフィルムを搬送し、塗布部で塗布液を コーティングします。
乾燥ゾーンで溶媒(有機溶剤又は水)を蒸発させたのち、巻き取り部(Winde)で巻き取ります。
コーティング層の特性により、乾燥後に紫外線(UV)を照射したり 塗布面に離型フィルムをラミすることもあります。
塗布機の塗布幅は試験塗布機では200mmから、生産機では1000mmから 2500mm以上のこともあります。
塗布速度は10m/分から数百m/分程度まで目的によって設計されます。
塗布液の膜厚は液体の厚みで数μm~200μm程度まで多種の場合があります。

塗布機では塗布液粘度、塗布量、塗布速度に適した塗布方式を選定することが最も重要です。



2、塗布方式の説明.事業内容概略のご説明

(1)スロットダイ塗布方式

スロットダイ塗布方式
塗布液を定量ポンプによりダイヘッドの マニホールドに送り、幅方向に広げたのち、スロットと呼ばれる狭い流路を押し出し、バックアップロール(BR)に 支持・搬送されているフィルムに塗り付けます。ダイヘッドは送液流量と塗布液粘度によりマニホールドとスロットの設計が重要になります。
送液した塗布液は全量塗られるため、液の循環系はありませんので、溶剤の蒸発や異物の混入の心配はありません
付属装置として、定量ポンプの他、フィルター、流量計、また塗布性を向上させるバキューム装置が要ります。

スロットダイ方式は低粘度から高粘度塗布液まで塗布液に適用できる良い方法ですが、塗布液粘度と塗布速度により最低塗布膜厚に限界があります。



(2)ウェブテンションドダイ(WTD)塗布方式

WTD塗布方式
本方式は、搬送されているフィルムにスロットダイを押し付けて塗布を行います(スロットダイ方式にあるバックアップロールがありません)。
塗布液がフィルムとの間隙を維持しますので、塗布液がないときはスロットダイ先端とフィルムは接触しています。
本方式はスロットダイ塗布方式に比べ、高速薄層塗布性に非常に優れています。 しかし、塗布速度、塗布量、フィルムの厚みなどの塗布条件により、ダイ先端の形状、ダイのセッティング、押込み量などに非常に多くのノウハウが必要です。
当事務所の代表は本方式の実用化を行った一人ですので様々な経験とノウハウを有しており、皆様のお力になれると思います。



(3) バー塗布方式

バー塗布方式

本方式は直径5~10mmのロッドに細いワイヤーをらせん状に巻き付けた バーをフィルムに押し付け、ワイヤーの溝容積の塗布液を塗り付けます。 塗布液膜厚で2μm程度から40μm程度の塗布に適しますが、高粘度の塗布液には適しません。

基本的には低粘度塗布液の薄層塗布が適しています。

幅方向と長さ方向の塗布膜厚の均一性に優れています。
また塗布液が空気と接触している面積が少ないので、溶剤の蒸発が少なく、 塗布液の粘度や固形分濃度の変化が少なくできます。
塗布速度と塗布液粘度の条件により、リビングスジという細いスジが全面に発生することがあり、速度、粘度、塗布量などを変えた対応が必要になります。



(4)リバースグラビヤ塗布方式

リバースグラビヤ塗布方式
本方式は、直径30mmから100mm程度のロールの表面に様々な形状の凹部や溝を付けたロールをフィルムの搬送方向と反対方向に回転させフィルムに接触させて塗布を行う方式です。
低粘度液から高粘度液までの塗布液に適します。
多くの事業所で使用されている塗布方式ですが、塗布液の固形分濃度の維持やフィルム端部の塗布膜厚維持に工夫が必要です。


(5)その他の単層塗布方式

①切り欠き円筒ドクター方式

切り欠き円筒ドクター方式

本方式は切り欠いた円筒の一部をドクターとする方法です。
(一般的には”マイクロバーコータ”とか”コンマ”と呼ばれています)
本方式で生産している場合もありますが、少量の液で塗布ができること、膜厚を簡単に変えることが出来ることなどから、開発初期の少量塗布テストに適します。




②連続供給ドクター方式

連続供給ドクター方式
本方式はエッジを使用したドクター方式です。
フィルムとエッジの間に液だまりを設け、液は連続的に定量ポンプで供給します。
(一般的には“CED:クローズドエッジダイ”または“リップ”と呼ばれています)
塗布膜厚はドクターエッジとフィルムの間隙で設定します。
比較的高い粘度の液を厚く塗布することに適します。






 


(6)多層同時塗布方式

①スライドホッパー方式


スライドホッパー方式本方式はカメラの感光性フィルムを生産するのに適した方式です。
スロットダイから押し出した液を斜面を流しながら、次々と液を重ね合わせ、フィルムに塗り付けます。
2層から10数層まで重ね合わせて塗布することができます。
開放系があるので、水系の塗布液の塗布に適します。





②WTDによる同時重層方式


WTD同時重層方式
本方式は単層WTD方式を重層塗布用に開発した方式です。
有機溶剤系塗布液に適しており、高速でかつ上層の塗布量は非常に薄くできることも特徴です。